V2H とは:車から家へ給電する仕組みと V2L との違い、対応する車の確かめ方、機器と工事、国の V2H 補助金(2026 年度の受付状況)と自治体の補助、停電時の使い方
V2H(Vehicle to Home)は電気自動車・PHEV の電池の電気を家に送る仕組みです。CHAdeMO 協議会・次世代自動車振興センターの定義と、メーカー・V2H 機器メーカーの公式資料から、V2L との違い、対応する車(急速充電口が要る)、機器と工事、国の V2H 充放電設備の補助(補助率・上限・申請期間と受付状況)と自治体の補助、停電のときの動き方と制約を整理します。
V2H(Vehicle to Home)は、電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHEV)の電池にためた電気を、家の配線に送る仕組みです。使うには車とは別に V2H 機器(V2H 充放電設備)と設置工事が要り、車の側は急速充電口(CHAdeMO)につなぎます。国の V2H 充放電設備の補助は、令和 7 年度補正の申請期間が 2026 年 9 月 30 日 17 時で終わっています(2026 年 10 月時点・次世代自動車振興センター)。自治体の補助は地域ごとに確かめます。
V2H と V2L の違い
| V2H(Vehicle to Home) | V2L(Vehicle to Load) | |
|---|---|---|
| つなぐ先 | 家の屋内配線 | 家電などの電気製品に直接 |
| 機器 | V2H 充放電設備(据え置き・工事が要る) | 外部給電器(持ち運べる)、または車の AC コンセント |
| 使い方の例 | 電気の安い夜に充電し昼に家で使う、太陽光の電気をためる、停電時に家に給電 | 屋外レジャー、災害時の非常用電源 |
(CHAdeMO 協議会「V2G/VGI」、次世代自動車振興センター「次世代自動車用語集」)
- 次世代自動車振興センター(NeV)は、V2H 充放電設備を「EV・PHEV への充電、並びに EV・PHEV から施設へ放電(給電)ができる装置」、外部給電器(V2L)を「EV・PHEV・FCV から電力を取り出す可搬型の装置」と説明しています。
- 国の CEV 補助金の交付規程は、車の「外部給電機能」を、外部給電器・V2H 充放電設備を経由して、または車載コンセント(AC100V 1,500W)から電力を取り出せる機能と定め、ここでいう V2H 充放電設備を「CHAdeMO V2H protocol 認証」に合格したものとしています。外部給電機能がオプションの車は、その機能を含む価格で補助を計算します(次世代自動車振興センター「CEV 補助金 交付規程」別表 1 の注)。
- 車そのものに AC 100V のコンセントが付く車もあります。日産 アリアは標準装備の AC 外部給電コネクターで最大 1,500W、スズキ e SKY(X)は最大 1,500W の AC 電源コンセントを備えています(各社公式)。当サイトでは AC コンセント付きの車 を絞り込めます。
対応する車の確かめ方
急速充電口が要る
- V2H 機器と車は、急速充電用の規格 CHAdeMO を介して接続されます(トヨタ公式)。スズキも、V2L 機器・V2H 機器との接続は急速充電ポートを使うとしています。
- そのため、急速充電口のないグレードは V2H に使えません。ホンダ N-ONE e: は、V2H/高出力外部給電に急速充電ポートが要り、e: L は標準、e: G はメーカーオプションです。スズキ e SKY の急速充電インレット(V2L・V2H 機能付)は X と G にあり、車両側の最大出力は DC 9kW です(各社公式)。
- トヨタは、一部の車種は「クルマ de 給電」や V2H に対応していないと注記しています(トヨタ「ナットク!EV 充電」)。
- PHEV にも対応する車があります。BYD SEALION 6 は V2H/V2L 対応と案内され、マツダ CX-60 の PHEV は主要装備表で急速充電ポート(CHAdeMO)と V2L/V2H 対応(給電機能)が付いています(各社公式・2026 年 10 月時点)。
機器との組み合わせ
- 日産は「EV-V2H/V2L 接続確認済み機器一覧」を公開しています(日産「自宅で充電」)。
- V2H 機器メーカーも対応車種の一覧を公開しています(例: ニチコン「対応車種一覧」)。
- 車種・年式・機器の型式の組み合わせで決まるので、車のメーカーと機器メーカーの両方の一覧で確かめてください。
V2H 機器でできること(機器メーカーの説明の範囲)
ニチコンは自社の V2H システム(EV パワー・ステーション VSG3 シリーズ)について、次のように説明しています。
- 停電すると、車から家へ自動で放電する。車が接続(コネクタロック)されていれば複雑な操作は要らない。コネクタロックされていないときは手動の起動操作が要る。
- 停電時の自立出力は 6kVA で、200V のエアコンや IH 調理器も使える。系統の電気が途切れると放電に切り替わる「自動切替開閉器」を使う。
- 家の電力消費に合わせて車への充電量を自動で制御し、契約アンペアの範囲で充電する。
機器ごとに出力や停電時に使える範囲が違うので、型式ごとの仕様を確かめてください。
充電にも使える
V2H 機器は車の充電もでき、日産は標準の 3kW より速く充電できるとしています(日産「自宅で充電」)。トヨタは、通常の家庭用コンセントの 3kW に対し V2H は 6kW の出力を持つと説明しています(トヨタ公式)。
工事
- V2H 機器の設置には工事が要ります。日産は V2H の工事は販売店に相談するよう案内しています。
- 国の補助を使う場合は、交付決定の後に発注・着工しなければなりません(次節)。
国の補助(V2H 充放電設備)
令和 7 年度補正の内容
| 項目 | 補助率・上限 |
|---|---|
| V2H 充放電設備の購入費 | 2 分の 1 以内・1 基あたり上限 75 万円 |
| 設置工事費(個人宅など、公共施設・災害拠点以外) | 定額(工事項目ごと)・1 基あたり上限 55 万円 |
| 設置工事費(公共施設・災害拠点) | 定額・1 基あたり上限 95 万円 |
| 外部給電器の購入費 | 3 分の 1 以内・上限 50 万円 |
(2026 年 10 月時点・次世代自動車振興センター「交付規程」別表 1・別表 2、応募要領)
- 目的は災害時のレジリエンス(回復力)の向上です。設置情報を国・自治体に提供すること、災害時に国・自治体から要請があれば可能な限り協力することが交付の条件です(NeV)。
- 設備の補助額は実際の購入価格に補助率を掛けて出します。
- 発注前・工事の開始前に申請し、交付決定の後に発注・着工します。国のほかの補助金と重ねて申請することはできません(交付規程 第 6 条)。
- 個人宅など(公共施設・災害拠点以外)に付けられるのは 1 基です。マンションの住戸内の分電盤から受電・給電する場合は「個人宅」の区分で申請します(応募要領)。
- 補助を受けた設備は 5 年間持ち続けて運用します(NeV)。
2026 年度の受付状況
- 令和 7 年度補正の交付申請期間は 2026 年 7 月 17 日〜9 月 30 日 17 時で、すでに終わっています。実績報告の提出期限は 2027 年 1 月 29 日です(応募要領 3-3)。
- NeV は 2026 年 9 月 25 日、短期間に申請が集中したため審査に時間がかかっているとし、交付決定の前に工事を始めると補助の対象外になるので、交付決定通知を確かめるまで着工を控えるよう呼びかけています。
- 次の公募があるかは、NeV のお知らせで確かめてください。
自治体の補助
都道府県・市区町村が V2H の補助を出している場合があり、EV 本体の助成を V2H 充放電設備の設置で上乗せする自治体もあります(例: 東京都の EV 補助金)。下の表は当サイトで集めているEV 本体の個人向け補助がある自治体の数です。V2H の補助の有無と額は、各自治体の制度で確かめてください。
| 都道府県 | 個人向けの補助がある自治体 | うち受付中 | 確かめた自治体 / 台帳の自治体 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 5 | 5 | 10 / 10 |
| 青森県 | — | — | 2 / 2 |
| 岩手県 | 5 | 3 | 7 / 8 |
| 宮城県 | 7 | 3 | 8 / 8 |
| 秋田県 | — | — | 1 / 1 |
| 山形県 | 3 | 2 | 4 / 4 |
| 福島県 | 11 | 10 | 21 / 21 |
| 茨城県 | 3 | 2 | 6 / 6 |
| 栃木県 | 16 | 8 | 22 / 22 |
| 群馬県 | 2 | 2 | 5 / 5 |
| 埼玉県 | 18 | 15 | 27 / 28 |
| 千葉県 | 52 | 52 | 55 / 55 |
| 東京都 | 9 | 5 | 16 / 16 |
| 神奈川県 | 15 | 12 | 22 / 22 |
| 新潟県 | 3 | 2 | 4 / 5 |
| 富山県 | 3 | 3 | 3 / 3 |
| 石川県 | 3 | 2 | 5 / 5 |
| 福井県 | 3 | 3 | 3 / 3 |
| 山梨県 | 6 | 2 | 7 / 7 |
| 長野県 | 16 | 16 | 22 / 22 |
| 岐阜県 | 7 | 5 | 11 / 11 |
| 静岡県 | 7 | 6 | 15 / 15 |
| 愛知県 | 22 | 12 | 50 / 50 |
| 三重県 | 8 | 7 | 9 / 9 |
| 滋賀県 | 2 | 1 | 3 / 3 |
| 京都府 | 2 | 2 | 3 / 3 |
| 大阪府 | 5 | 3 | 8 / 8 |
| 兵庫県 | 5 | 3 | 11 / 11 |
| 奈良県 | 2 | 2 | 3 / 3 |
| 和歌山県 | 2 | 2 | 2 / 2 |
| 鳥取県 | 1 | 1 | 11 / 11 |
| 島根県 | 1 | — | 2 / 3 |
| 岡山県 | 16 | 13 | 19 / 20 |
| 広島県 | 2 | 2 | 4 / 4 |
| 山口県 | 3 | 3 | 4 / 4 |
| 徳島県 | 1 | 1 | 5 / 5 |
| 香川県 | 4 | 1 | 6 / 6 |
| 愛媛県 | 16 | 11 | 16 / 16 |
| 高知県 | 1 | 1 | 3 / 3 |
| 福岡県 | 8 | 5 | 12 / 12 |
| 佐賀県 | 3 | 3 | 3 / 3 |
| 長崎県 | 2 | 2 | 2 / 2 |
| 熊本県 | 2 | 1 | 2 / 2 |
| 大分県 | 2 | 1 | 3 / 3 |
| 宮崎県 | 1 | 1 | 1 / 1 |
| 鹿児島県 | 6 | 5 | 7 / 7 |
| 沖縄県 | 3 | 2 | 3 / 3 |
自治体の EV・PHEV・FCV の購入補助。都道府県ごとの一覧と各自治体の公式ページは「EV 補助金(自治体)」のページに。
地域ごとの一覧は 都道府県別の補助金、調べ方は 自治体の EV 補助金の調べ方 にあります。
停電のときに確かめておくこと
- 機器の起動のしかた: 自動で切り替わるか、手動の操作が要るか(ニチコンの例ではコネクタロックの有無で違う)。
- 使える電気の量: 機器の自立出力と、車の電池の残量で決まります。ふだんから電池を空にしない使い方が前提です。
- PHEV はエンジンが始動することがある: 三菱は、アウトランダー PHEV のアクセサリーコンセント使用時に電池が減ると自動でエンジンが始動して充電し、停車中のエンジン始動がアイドリングストップに関する条例に触れることがあると注意しています。
- 詳しい操作は、車の取扱説明書と機器の取扱説明書で確かめてください。
関連する記事と車種
- 充電口の規格: EV の充電規格(CHAdeMO と普通充電)
- 自宅の充電設備と電気代: EV の自宅充電の電気代
- 買う前の確認: 電気自動車を買う前に確かめること
例に出した 日産 サクラ・日産 アリア・ホンダ N-ONE e:・スズキ e SKY・三菱 アウトランダー PHEV・BYD SEALION 6・マツダ CX-60 の車種ページで、グレードごとの補助金と維持費を見られます。
この記事に出てくる車種
この記事に出てくる用語
- V2H 充放電設備 — 電気自動車やプラグインハイブリッド車への充電と、車の電池から家などへ電気を送る放電の両方ができる設備。停電のときに車を家の電源として使える。
- 電気自動車(BEV) — 外部の電源から車の電池に充電し、その電気だけでモーターを回して走る車。エンジンを持たず、走っている間は排気ガスを出さない。
- プラグインハイブリッド車(PHEV) — ハイブリッド車に、コンセントなど外から充電できる機能と大きめの電池を加えた車。電気だけで走れる距離が長く、電気が減ってもエンジンで走り続けられる。
- ハイブリッド車(HEV) — エンジンとモーターのように仕組みの違う動力を複数持ち、走る状況に合わせて使い分けたり組み合わせたりする車。外から充電はせず、エンジンの力や…
- 急速充電 — 大きな出力の直流で、短い時間に多くの電気を入れる充電方法。高速道路のサービスエリアや道の駅、コンビニなど、移動の途中に寄る場所に置かれることが多い。
- 充電口 — 車体にある、充電器や充電ケーブルのコネクターを差し込む口。普通充電用と急速充電用で口が分かれている車もある。
- CHAdeMO — 電気自動車の直流による急速充電の規格の名前で、その普及と技術開発を進める団体の名前でもある。日本で生まれた規格で、急速充電の差し込み口が普…
- 次世代自動車 — 運輸部門の二酸化炭素を減らすために、国が普及を目指している車をまとめた呼び方。ハイブリッド車・電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電…
- 外部給電器(V2L) — 電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池自動車から電気を取り出し、家電などに使えるようにする持ち運べる装置。
- 外部給電 — 電動車の電池や発電の力で、車の外にある家電や施設に電気を送ること。災害で停電したときに、電動車を動かせる非常用電源として使える。
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